日本脳炎ワクチンの最新情報です(平成21年5月28日の現状)
新しい日本脳炎ワクチンが開発されました。平成21年6月2日より定期接種(公費負担)として認められ接種が可能となります。
日本脳炎は蚊が媒介する日本脳炎ウイルスによって起こる感染症で、発症すると死亡率15%と恐い病気です。助かっても脳障害が45%〜70%に残ることが知られています。
日本では、発症した人は1966年の2017人をピークにして減少し、1992年以後は毎年10人以下になっています。しかしながら、東南アジア・南アジア一帯には流行地域があり年間3〜4万人が発症しています。
日本では患者数が少なくなっていますが、西日本を中心に日本脳炎ウイルスを増幅させる動物であるブタには日本脳炎ウイルスが証明されており、日本脳炎ウイルスが日本にも存在していることがわかっています。また海外に行くことで感染する危険もあります。そのことよりワクチンの必要性が認められています。
1期(2回)・1期追加(1回)・2期(1回)の3つがあります。計4回接種することになります。
1期: 生後6か月から7歳6か月未満(標準的には3歳〜4歳)に1回目を接種し、1〜4週間あけて2回目を接種します。
2期: 9歳以上13歳未満でもう1回接種します。(2期は新しい日本脳炎ワクチンは使用できません)
副反応について
新しい日本脳炎ワクチンは生後6か月から7歳6カ月未満の123人の小児に対して臨床試験が行われました。
発熱(18.7%)・咳(11.4%)・鼻水(9.8%)、注射部位が赤くなった(8.9%)。これらの副反応はほとんど接種3日後までに認められました。
*日本脳炎ワクチンを接種したら咳・鼻水??ってどういうことなのかしら?と僕は思うのですが・・・ 接種した小児がたまたま後日風邪にかかったのかもしれませんが・・・そのことについては詳細不明です。
現時点では重大な副反応(ショック・急性散在性脳脊髄炎・脳症・血小板減少性紫斑病など)は報告されていません。しかしながら、新しい日本脳炎ワクチンなので、たくさんの子供たちへの接種がはじまると、重大な副反応が出現する危険性はゼロではありません。
Q:新しい日本脳炎ワクチンは今までのワクチンとどこが違うのですか?
A:従来の日本脳炎ワクチンはマウス(はつかねずみ)の脳細胞を使用して作られました。新しいワクチンはアフリカミドリザル(猿)の腎臓細胞を使って作られています。アフリカミドリザルの腎臓細胞は狂犬病ワクチンや不活化ポリオワクチンに使用され実績のあるものです。
Q:なぜ2期では新しい日本脳炎ワクチンが使えないのですか?
A:1期では臨床試験が行われましたが、1期追加や2期では臨床試験が行われていません。よって、接種後のデータがないために、現時点では1期のみにかぎり新しい日本脳炎ワクチンを接種することになりました。将来的には使用できる可能性はあると思います。
Q:堺市ではどこの医療機関でも新しい日本脳炎ワクチンが接種可能なのですか?
A:新しい日本脳炎ワクチンが、オリオノクリニックでも接種ができるようになりました。しかし、現在のところ、新規の1期のみの対象者だけに接種可能で、1期追加接種や2期接種の対象者には接種できません。一方、旧ワクチンについては、いままで通り市立堺病院と大阪労災病院での接種になっております。
新しい日本脳炎ワクチンは現在本数も少なく、当院では予約を受け付けさせていただきワクチンが届きしだい御連絡させていただきます。申し訳ありませんが、お電話での予約は受け付けていませんので、一度受診をお願いいたします。
Q:現在の状況について教えてください。
A: 日本脳炎ワクチンが中止に近い状況になっています。それは日本脳炎ワクチン接種後に急性散在性脳脊髄膜炎という副作用が出たためです。新しいワクチンを開発中なので、積極的にワクチン接種をしないでください。と厚生労働省が決めました。
新しいワクチンが出るというので、いったん中止に近い状況となったのです。しかし3年経ちましたが新しいワクチンの目処が立っていません。このままでは日本脳炎の患者がいくら少ないとはいえ、少しずつ発生する恐れがあります。現に2人の子どもがすでに罹患しています。
ワクチン製造も落ちてしまいました。だれも接種しないのにワクチンを製造しても仕方がないからです。いまでは、どうしても日本脳炎ワクチンを接種したい人に対してもなかなか入手困難な状況になってしまいました。
※2006年5月厚生労働省健康局結核感染症課予防接種係より「定期の予防接種における日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨のさしひかえについて」という以下の文書が届きました。
1) 平成17年5月、日本脳炎ワクチンによる健康被害の重症のADEM(急性散在性脳脊髄膜炎)がマウス脳の製法による日本脳炎ワクチンと因果関係があると判断されたことにより、現時点では、より慎重を期するため、定期接種として現行の日本脳炎ワクチンの積極的勧奨を行わないように勧告する。
2) よりリスクの低い組織培養法によるワクチンが現在開発中であることから、供給できる体制ができたときに供給に応じ、接種勧奨を再開する予定。
3) 流行地へ渡航する場合、蚊に刺されやすい環境にある場合など、日本脳炎に感染するおそれが高く、本人またはその保護者が希望する場合は、効果及び副反応を説明し、明示の同意を得た上で、現行の日本脳炎ワクチンの接種を行うことは認められる。
いつ再開されるか目処がたっていません。その間、日本脳炎ワクチンを控えていた子ども達はどうなるのか、はっきりとわかっていません。堺市は市内2つの病院のみが日本脳炎ワクチンを接種可能病院として(市立堺病院・大阪労災病院)、その他の病院では接種できないと決めてしまいました。もし自由に接種できるのなら当院でも接種できるようにしたいのですが・・・もし再開された時に接種を見合わせた子どもは公費負担にしませんよ、だってできるだけ接種しないでとはいったけど絶対接種しないでとはいいませんでしたよ、なんて厚労省が言ってきたら許せないです。また予算がないことにかこつけて、このまま日本脳炎ワクチンは中止しときましょうなんて思っていたら・・・今後の情報が乏しいのでどうなっていくのかわかりません。
Q:先生は現時点でも日本脳炎ワクチンをすすめますか?
A: ADEMという重篤な副作用がでたことは事実です。流行地に渡航するときや蚊にさされやすい環境にあるとき(近くに養豚場があるなど)は接種したほうが良いと思います。クリニックの速報を参照してください。
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