オりオノクリニック (小児科) 本文へジャンプ
オりオノクリニック月報
月々の話題や役立つ情報を掲載します


2026年2月

アレルギー性疾患の低年齢化・増加の理由は?(衛生仮説の話)

アレルギー性疾患とはアトピー性皮膚炎・食物アレルギー・アレルギー性鼻炎・花粉症・喘息などの総称です。先進諸国では日本を含めて、アレルギー性疾患は低年齢化して増加傾向です。現在は日本人の2人に1人は花粉症ですというレベルまで増加しています。花粉症は幼児期からデビューしています。

さて、江戸時代・明治・大正・昭和ではそこまでアレルギー性疾患が多かったのでしょうか?私が小学生の頃は、花粉症で悩む友人や学校給食で除去食を食べる友人がいたことは記憶にありません。一方で、いわゆる発展途上国では、アレルギー性疾患はそれほど増加していません。なにが関係しているのでしょうか?今月の題材は、人がアレルギー体質になりやすい原因として注目される衛生仮説です。

 衛生って衛生・不衛生で使用される言葉ですよね。1989年、英国のグループから21歳の時点で花粉症を持っている人は、持っていない人に比して兄弟姉妹が多いこと、年少の同胞より年長の同胞の数に大きな関係があると報告しました。(つまり、お兄さんやお姉さんが多数いるほど花粉症になりにくいと結論する報告です。そのグループは、家庭内で年長の兄・姉から感冒に感染する機会が多いほうが、人はアレルギー体質になりにくいのではないかとして衛生仮設を提唱しました)

 その後、いろいろな報告が続きました。生後早期に保育園に預けられた児では、生後遅くに預けられた児よりもアレルギー体質になりにくく、乳幼児期に感冒に感染する回数が多いほどアレルギー体質になりにくいこと。家畜を飼育している農家で成長した児は、同一地域の農家以外で育った児に比して花粉症が少ない。その後、家畜を飼育する農家の家庭内ではエンドトキシン(細菌毒素の1種)の量が多いこと、さらには家庭内のエンドトキシン量が多いと、アレルギー体質になりにくいことが報告されました。咳活環境に風邪のウイルス・細菌が多いほど(不衛生なほど?)、子どもはアレルギー体質にはなりにくいと示唆する報告です。

 さて、専門的な話をしますと、人間の免疫機能はTh1系とTh2系に分かれ、お互いに協調しながら免疫の働きをしています。アレルギー疾患の発症にはTh2系が関係していることは明確な事実です。妊娠中の母親は、胎児の胎盤を拒絶しないように、また胎児は母親の子宮を拒絶しないように、妊娠中は母子ともに強く免疫機能が偏向されていまして、出生した赤ちゃんは皆、Th2系がTh1系より優位に強いのです。出生してからは、感冒に感染したり、細菌感染を受けたりすると、Th1系がしっかり働くようになり、Th1系とTh2系はバランスが調節されていきます。Th1系を成熟させるためには感染を受けることが重要なのです。

50年~100年以上前と比較して、私たちの生活環境は、上下水道が整備され、道路は舗装され、住宅環境もきれいになり、食べる物も変わりました。衛生面で格段に向上したのです。仮に、生活環境の衛生面が素晴らしすぎて、乳幼児期に1回も風邪をひいたことがないとなると、Th2系が生後いつまでも優位な状態で維持されてしまい、Th1系とのバランスが悪くなり、結果的に、優位となったTh2系がアレルギー性疾患の低年齢化発症や増加に関係することになるという有名な衛生仮説の話でした。





 いろいろな心配事に関して、お気軽に御相談下さい。E mailでも全然構いません。私の手に負えない内容なら、その道の専門の先生に相談させていただいた上でお答えいたします。
 oriono-clinic@miracle.ocn.ne.jp


このページの先頭へ




 オりオノクリニック ホームへ